物質材料工学専攻 准教授

田中 諭


 

 

構造用セラミックの製造と効果

NTIC: 先生の研究について簡単に教えていただけますか?

田中: 私の専門の研究では、セラミックスの粉をある形にして、そして焼くという中で、何がどう起こっているかというところを調べています。

NTIC:俗に言うニューセラミックスの焼結する過程でいろんなことが起きているという意味ですか?

田中:そうです。成形や焼結の過程で起きている現象を明らかにする、ということです。セラミックスというのは、作る途中で壊れたり、できたものでも性能の悪いものがあったりという問題があって、もう一つ先に進むためには作る過程での科学が欲しかったのですね。意外とそのあたりが分かっていなくて、技術者の勘だとか経験だとかに頼っているところが大きくて、そこのところをもう少しサイエンスにできたら、と思ったんです。そうすると、皆さん産業界の方たちがどういうところを指針に新しいものを作っていけばよいのかわかりますので。

NTIC:先生がされている研究はかなり学術的なことで、それをベースとして企業の方たちがそれを見たときにどう応用していただくかというところになると考えればいいですか?

田中:そういうことですね。

NTIC:かなり細かいところまで、今のセラミックスのもともとの性格を突き詰めようとしているということですね。

田中:そうですね。粉の性質を知って、上手に操作して、いかに均一な構造を作るか、そしていかに上手に焼結するのか。ということですね。

NTIC:例えばという話で、こんな風にしたらこんな現象が起きてこんな効果があったんですよ。という話をしていただけますか?

田中:そうですね・・・。難しいですね(笑)。では、変形の話をしましょうか。焼結時の変形の話をします。
  セラミックスは焼結すると縮むのですが、それぞれの方向で収縮量が違い、最初の形が変わってしまうことがよくあるんです。そうすると、製品にするときに加工しなければいけなくなります。加工ではダイヤモンド砥石を使います。そうすると、製造のコストも高くなりますし、時間もかかりますし、途中で割れるかもしれない。それでセラミックスの値段はかなり上がってしまい、問題でした。では、「なぜ変形するのか?」というところですが、粉の形に原因があるんです。粉は球形ではなくて、すこし細長い形をしています。これはもとの結晶の性質の影響を受けているのですが、その細長い形の粉が並んでいることが原因であるということを見つけました。今まではそんなことは分かっていなかったんです。それをある方法で観察するとある程度並んでいることが分かり、どちらが縮みやすいのかが分かるようになったんです。そうすると、並び方を調べて変形分を予測したり、最初の粉を球形に近いものにして並ばないようにしたり、といったことができるようになりました。私たちは考え方を示すことで、作り手がそのどれかを選択できるようになります。

NTIC:そういう調整ができるように理論的に考えて、実験をされているんですね。

田中:そうですね。理論ほどできていませんが、ある程度考えて、実験データーを積み上げていくことをしています。

NTIC:その並ぶという状況は、成形をしている過程、焼いている過程。どこでもそういう現象が起こるんですか?

田中:成形する過程で起こります。焼いている過程でも並びますが、それは成形したときの並び方が影響していて、成形した後の並び方から、焼いている過程の並び方をある程度予想できます。

NTIC:一般的によく使われている、酸化アルミニウム(アルミナ)やジルコニアなど、セラミックスの中身が関係なくても同じようなパターンでできるんですか?

田中:そこが面白いところで、ものによって違います。アルミナやジルコニアでそれぞれパターンがあるということが分かってきたところです。

NTIC:一番主体にされている素材の種類は何ですか?

田中:今、主体にしているのは、アルミナや酸化亜鉛ですね。

NTIC:その二つの種類を混ぜ合わせて作ったりもされるんですか?

田中:それは問題が複雑化されるので、まだやっていません。まず単純な単一系でやっています。単一系でもすごく深いんですよ。粉の形の効果もあるし、その中の原子の並びの効果もある。それらを成形したり焼結したりすると、それぞれ少しずつ違う現象がみられます。それらを一個一個どういう原理に基づくのかというところを明らかにしていくと、セラミックスの作り方ももう少し分かりやすくなるかなと思っています。

NTIC:さきほど、粉の作り方とありましたが、先生の研究室ではどうされているんですか?

田中:単一系であれば、市販のものを買ってくることが多いです。ちょっと物質系が複雑なものは自分で薬品を混ぜ合わせて反応させて作ったりもしています。

NTIC:もともと学生の頃からセラミックスを研究されていたのですか?

田中:この研究を始めてから10年くらいになります。もともと学生の頃は航空宇宙材料に使われる炭素繊維強化炭素複合材料を研究していました。

NTIC:セラミックスはすごく範囲が広いので、本学の中だけでも研究されている先生がたくさんいらっしゃいますよね。

田中:そうですね。皆さんそれぞれ色々なアプリケーションを考えたうえで、いろんな研究をされていますよね。私達はアプリケーションとしてはどちらかというと構造材料でしょうか。製造機械に使われるようなセラミックスのある形を作ることを一つの目的として、その作り方のところを一生懸命研究しています。

NTIC:ちょっと砕けた質問をさせていただきますが、先生の研究が実用に向けていろんな形で生かされるとしたら、どんな企業と話をするのが一番生きるんでしょうか。

田中:セラミックスの部品を主として作っている会社です。

NTIC:ということは、現在もそういう関連の企業さんたちと共同研究をやられていますか?

田中:現在はやっていないです。どちらかというと、私達は独自に研究して、いろんなセラミックス企業がときどき質問に来られますので、解決のためのアドバイスをします。たまに短期的な共同研究になった場合もあります。

NTIC:例えばセラミックスにまつわるようなところが県内にあって、そういう企業が先生の研究に興味をもたれて、一緒にやれないかという相談に来られたとしたら、受ける準備はありますか?

田中:もちろんあります。


 

配向技術による機能性セラミックス

田中:今までの内容とは別にセラミックスの組織制御という研究をしています。さっき話をしました粒子の並び方と関連するんですが、今度はその粒子の並びを意図的に作るということをしています。それによって、壊れにくくなったり、機能を引き出したり、という可能性がでてきます。

NTIC:粒子の並びを意図的にすることで、今これをやったら今まで簡単に壊れていたものが壊れなくなるとか、そういうところを具体的に上げるとしたら何がポイントですか?

田中:壊れなくなるというのは難しいところで、それがわかってそのとおりにできれば、たぶんこの研究は終わってしまうんですが・・・。壊れなくしようとするのであれば、並べると同時にちゃんと粉を均一に詰めることがポイントですね。ミクロン以下の粉を隙間なく均一に操作できる技術も必要になります。

NTIC:その技術によって、例えばセラミックスなので基本的には熱の伝導性は高くはないけれど熱伝導性が改善される等の可能性はありますか?

田中:熱伝導が高いセラミックスの中で、熱伝導の特に高い結晶方向を並べれば、熱伝導が改善されると思います。粉というのは一つの結晶でできています。その粉を並べる。すなわち単結晶を並べるというイメージでセラミックスを作れば、全部が一つの結晶みたいになります。じゃあ、最初から大きな一つの結晶を作ればいいじゃないかって思われるかもしれませんが、それはそんなに簡単じゃないので、結晶を並べた構造を作るんです。
  図2は酸化アルミニウム(アルミナ)と酸化亜鉛です。アパタイトもあります。それから、今、強誘電体のほうにも凝っています。磁石を使って成形して、粒子を配列させます。そして、配列する過程や焼結の過程、それから配列が特性におよぼす影響を調べる研究をしています。


NTIC:図2のように配列がきれいに並んでいるというイメージですか?

田中:そうです。それぞれの粒子が結晶で、その中ではアルミナは酸素原子の面、アルミ原子の面、酸素原子、アルミ原子というふうな構造をしています。その方向をc軸といいます。すべての粒子がその方向に並んでいるというイメージですね。酸化亜鉛も同様ですが、亜鉛原子の面があって酸素の原子の面が上にあります。普通の成形では、結晶はあちらこちらを向いていてランダムです。特性の良い方向の結晶粒子とそうでもないものからなり、全体としては平均的な機能特性にしかなりません。そこで、結晶粒子全部を特性の良い方向に揃えれば、素晴らしい機能が引き出せるようになります。

NTIC:その揃え方を例えばこの場合だとたまたま磁石を使っていますが、いろんな揃え方があるんですか?

田中:はい。最近私の中で流行っているのは磁石です。もちろん、他にも方法はあります。他の方法とは、粉の形を利用して力で揃える方法です。話を戻しますが、ただ、単に磁石といっても、使い方では工夫もしています。アルミナや酸化亜鉛では磁場の使い方が違います。磁場の方向を鉛直にすると、磁場の方向にアルミナのc軸が向きます。磁場を水平面内方向で加えると鉛直方向にa軸が向きます。酸化亜鉛では同じ方法ではc軸が揃います。最近では、磁石の使い方を工夫して微粒子を並べたい方向に自由に並べることができます。並べる方向は機能次第です。ある機能特性を、サンプルのある方向で良くしたいとします。まずその物質の結晶においてその特性が優れた結晶方向を調べます。次に、サンプルの形と並べたい結晶方向を決めます。そしてそれぞれの結晶の磁場中での配向方向をみて、どんな方向から磁場をどうやってかけるのかを選択します。それでその配列を得るための準備をして実行する。ということですね。

NTIC:深いですね。

田中:深くなってきました。当初はそんなに複雑なことをするつもりはなかったんですが(笑)。
  磁石を使うのは強誘電性だとか、熱伝導の改善を求める話です。最初にお話したのは機械材料用のセラミックスを目指すもの。そちらでは大きな欠陥があったら困りますので、それを見つけて強度だとか変形だとかについてお話しました。私の研究は両方とも粉を形にして焼いて作りますが、この二つで走らせています。

NTIC:先生の研究室は、焼成等をできるような設備は全部お持ちなんですか?


田中:一応あります。もちろんないものもありますが。私、植松先生のところで助手、助教としてずっと一緒にやっていたので、そこのところは利用させていただいています。その他、実験室にはけっこう大型系の設備もたくさんあります。今までお話した研究用の大きな磁石もあります。超伝導磁石です。電気抵抗が0になる温度4ケルビン位にして、10テスラという強い磁場を作ります。実際に使える領域は直径10センチくらい。もちろん磁石の強さがもっと弱くても配向させられれば、もっと大きな磁石を利用できて、量産向けも可能になると思っています。これは、製造プロセスを改良することでできると思います。会社が設備投資をして実際に製造できるように、もっと小さな磁場でも配向させるようにしたいというのが今の目標です。