技術科学イノベーション専攻 教授
山口 隆司

インタビュー日 :平成22年9月21日

 

 

 

 

 

高専との連携

NTIC:先生の研究室では、学生は何人ですか?

山口:私の研究室は、学生が学部4年生からドクターまで30人います。学生は戦略的に育てています。

NTIC:それは、どういった形でですか?

山口:JPSと言って、給料をもらってドクターになれる仕組みがあるのですが、それに選ばれるようにしています。1年生のときから、論文を書かせています。すると、論文評価で通るのでそうさせています。

NTIC:それは、環境という業界だからですか?

山口:環境は論文は出にくいです。でも、例えば高専の学生の場合、早いうちから先生と連絡を取って、大学の方に1~2週間きてデータを取得したりしています。高専の時からの成果を活かしています。

NTIC:それは、先生が声がけして、高専の学生との連携をとっているということですか?

山口:そうではなくて、僕は前職は高専の教員だったので、在籍中から音頭とりみたいなことをして、それをそのまま引き継いで拡張中なのです。

NTIC:何か実例として拡大していることはありますか?

山口:はい、あります。ただ、今は少し面倒になっています。というのも高専にいるときは勝手が言えるのですが、本学からはあんまり勝手が言えないなっていうのがあるので。

NTIC:それはどういった理由でですか?

山口:高専にとっては、本学は強くも主張が言える大学ではあります。ですが、連携する必要があるかというと、他の地方大学もありますし、その地方大学と本学との違いは特にないだろうと、そういう意味からです。

NTIC:だから、本学としてはあまり強く出れたりはしない?

山口:うーん、でも本当は強いところはあるのですよ。一番は長いタイムスパンで付き合いが出来るので。学生とも勿論、高専との先生ともです。専攻科のときから仕掛けておいて、そういう人材を育てるという活かし方もしています。

NTIC:高専の学生が本学に入学することが前提での連携ですよね?

山口:高専と本学の双方がやりたいことは、学生を育てることなのです。自分たちは共通して教員なので、学生たちを自分たち以上に育てたいのです。学生からみると、本学からだと、卒業後、いきたいところ(国の研究所とか海外)にいけるつてがあるので、出してあげられる。すると、有難いことに学生の方から志願してきます。そんな形のサイクルになっています。

NTIC:先生のテーマを全国の高専に情報発信しているということですよね?

山口:はい、出来るところは何でも一緒にやりましょうっていうのをやっています。

NTIC:過去にも数例があるっていうことですか?

山口:いや、もう常にやっていますよ。NEDOプロとか。NEDOプロは、5~6の高専に入ってもらって

NTIC:全国の高専ですか?

山口:ただ、お互いにぶら下がるのはやめにして、みんなが最低限日本では一番くらいの技術を持ち寄り、各高専で準備しましょうって言っています。一回テーマを投げると、多くのデータがとれて、一粒で7個おいしいという形になりますので。高専には、それぞれ良い特徴があって、それらをぐるぐると回せば、それでいいんですよね。そういう仕組みなんです。

外部資金獲得

NTIC:主な目的としては外部資金を獲得しようと声かけあった、ということですね?

山口:高専だと、器材を揃えたりするのも大変だったのです。器材を揃えることは、教育に必要なことです。また、学生の学会旅費を準備し人材育成を行わないといけません。特に高専では、学生が大学のように長時間研究室にて作業がしにくく、自動化を図る装置整備が大いに必要です。それを揃えるためには競争的資金を取って来なければならない。それを準備・整備するために、それぞれのところでシーズがあったり最適化があったりする、その要素技術というのをみんなでやりましょうって、そういう形です。 NTIC:それは、最初からうまくいったのですか?

山口:いえ、最初は何もないわけですよ。学生に満足に研究させられる物品が足りない。そこでお願いするのです。学会や大学に出して下さいと。でも、それでも足りないので、単独プレーで外部資金を得るために、近くの財団等の応募してということをやりました。でも、まだ足りないのです。で、考えたのですね。学内連携ということを。

NTIC:それは、どういったことでした?

山口:例えばこんなことでした。そのとき、コンピュータがなかったので、「わくわく体験理科教室」(地元の中学生を対象)ということを計画しました。今でもやっておりますが、その当時はしていなかったので。で、企画すると、学生に新聞を配ると言えば、そのためのパソコン、デジカメ、プリンター、スキャナが買えたのです。学内連携をやってくれる先生がいたのでそういうことが出来ました。

NTIC:申請をしたら実験道具が買えるよっていう状況にもっていったんですね?

山口:ほぼ、1~2年で立ち上がらないと、立ち上げ損ねてしまう。さっさと教育施設である研究室を立ち上げたいと頑張りました。ある意味言い訳なのかもしれないのですが、結局、外部との共同研究云々って言っても高専では、教育の時間にとらわれるからなかなかそれが出来ないっていうじれんまはあったのです。

NTIC:それで早くから計画・実行に移さないとなのですね?

山口:はい、早い段階でのスタートがベターです。資金がなければ成果で出ない、成果が出ないから資金がないという悪の道をやるか、資金を得て成果が得られれば再チャンスが回ってくるという真の道。どちらがいいかという話ですね。

NTIC:そうですね。

山口:若干お金があるときに、何をしようかなと考える。そうした時に知財を溜め込まないとなんです。で、数年間はものを外に出さない。外にシーズを出さない時期も必要でした。それで、一応知財を溜めこんだので、次の段階の連携なのですが、ここが連続していくって言うのは大きい連携を組まないとなのです。

NTIC:それで、うまくいったのですね?

山口:色んなプロジェクトを並行して走らせる。このとき全部で10プロジェクトくらい走らせるんですね。これは連携がないと出来ないです。後は教育の効果が期待出来る。(山口先生の研究室の学生は、専攻科生までで論文2本を書いて、海外の学会3回くらい行って全部で14回くらい発表する)

NTIC:学生の育成のためにも、いいことですね。

山口:現在は要素技術をパッケージにまとめて海外に仕掛けるところを考えたりしています。高専の先生たちって、かなり実用化に近いようなことをしているので、結構活かせるのではと思うんですね。

NTIC:どんなことがどんな形になるかでしょうか?

山口:これは(図1)、鹿児島高専の山内正仁教授及び山田真義助教の例なのですが、鹿児島の焼酎製造残滓が出るので、その焼酎カスを使って固体分できのこを作る、廃水の方は有機物が溶けているのでそれでメタンのガスを作る。それを乾燥させて、この菌床を作る。菌床の上は、きのこなので食べてしまいます。残った廃菌床を黒牛、黒豚の餌にしてしまう。

NTIC:多彩なのですね?

山口:これ、僕が面白いなあって思うのは出口が沢山あるサイクルなんですね。

    1.焼酎売れる
    2.きのこ売れる
    3.牛肉、豚肉売れる
 出口が多い。こういうのを本学で応用すると、新潟県でもこれと似たことは使えます。
 これで、
    1.水の管理が出来る
    2.食料のはなしも出来る
    3.バイオマスも出来る
 同じではないのですけれど、こういうのを改良してセットものにして国内外に野菜工場などにして持っていき、売ってしまいたいなと思っています。
   

脱たんぱく質化天然ゴム廃液の再資源化処理

NTIC:基本的には、先生の研究の主体は微生物なんですよね。微生物をうまく応用して活性化させて水を綺麗にしたり?

山口:でも、水ばっかりではないのです。『脱たんぱく質化天然ゴム廃液の再資源化処理』というのをしています。今、タイヤが2兆円産業と聞いています。ゴムを生産する工程は、ヘベアとかゴムの木をとり加工する。で、これにゴムが残ります。一時ゴム回収をして、その排水が出たら、それをメタンガスに変えるとか、再資源化を考えたりしています。

NTIC:ゴムを生成する過程の中で水を使うわけですね。その水が排水として綺麗じゃないものが出てくるので浄化させるために水の浄化のサイクルがある。

山口:そうです。これは、生物系の福田先生、小笠原先生、物質・材料系の河原先生と組んでやっているのですが、高度バイオマス利用や廃液処理をすすめています。
ゴムがコアになって、色々なまわりとくっついて、JST-JICA向けのプロジェクト(ベトナムと実施)に繋がっています。(図2)

 

要素技術開発


山口:あと、研究室には海水で魚を飼う水槽があります。もともと水族館向け儀技術ですが、養殖にも応用出来ます。

NTIC:養殖が出来るってポイントは何ですか?何がそんなに養殖に向いているのですか?

山口:たくさんの魚がいると、どうしても、魚の排泄物がたまって、水が濁ります。その濁りを取り除くというときに、この技術を使えばコンパクトでエネルギーがかからなくて、水を浄化しながら養殖にも使えます。

NTIC:そこに基本的には介在するのは微生物なのですよね?

山口:微生物だけで細かいものをつついているだけじゃなくて各種ドンガラ物(バイオリアクター)もできます。

NTIC:ドンガラ物というのはその微生物が活動しやすい環境を整えるためのものですよね?

山口:大体はそうです。テーマとしてはゴムだったりの色んな排水処理です。食品残渣もあります。これは、NEDOプロで新エネルギーに関心の高い企業と一緒にやらせてもらいました。他には砂糖を作っているという国ということで、アジアや中南米が一緒に仕事が出来ます。実際アジアでは一緒にやっています。
他には、バイオエタノール製造にというのを、宮古島の環境省プロジェクト(図3)で係わっています。どうしてわざわざ長岡から宮古島に行くかといいますと、エネルギーがすごくかからない技術が長岡にあるからです。


新規下水処理システム開発

山口:これ(図4)は長岡の下水処理場にてロケットみたいな装置を置いて下水処理をやっています。そこで作った技術をインドやタイでも展開したいと考えています。インドの場合は、JST-JICAのプロジェクトに同時に選ばれているので、インドで標準化出来たらいいなと思っています。

NTIC:いつも海外にいらっしゃって、そういう関係がひっきりなしなんですね?

山口:インドでビジネスを成功すると次は中東が待っているんです。ということで、これを世界の標準基準にしたい・するということで、世界制覇技術って言っています。

NTIC:大きいですね?

山口:ええ、海外でコンクリート物を作ってそれを日本にどうお金を持ってくるかを解く必要があります。環境装置では海外でドンガラ物を造るっていうことになります。そこで使う安い材料みたいなのが得られたら、日本に持ってくるとか、人材を養成して設計費用を安くするとか考えられます。

NTIC:ある意味ソフトですからね。知財みたいにしっかり押さえられれば多少はアピール出来るんでしょうけれども。

山口:どうやったら日本が儲けられるかっていうのが難しい。もうひとつ、新しい環境技術は日本で認証されることがむずかしく、新しい技術が日本でとりいれられたにくいので、開発技術を海外にて普及させて、逆に日本に輸入して日本の普及技術にしたいと考えています。

NTIC:本日は、長い時間、楽しいお話ありがとうございました。NTICとしても、何かお手伝いが出来ることがあれば、させて頂きます。