機械創造工学専攻 准教授
磯部 浩已

 
インタビュー日:平成22年9月13日

 

 

金属加工について

NTIC:金型加工の話をお願いします。

磯部:ある素材を流し込むとか、素材を押し込んだりする、大量生産をするための型なんですよ。で、こういうのって、硬い方がいいですよね?

NTIC:そうですね

磯部:硬くなればなるほど寿命も延びるし、硬い相手のものも変形させられる。でも、硬いから、加工って難しいのです。

NTIC:そうですよね。

磯部:硬い物を削るための手法として、刃物自体を硬くするとか、電気を使った加工(放電加工)とか色々あります。放電加工ですと、すごく時間がかかります。その上、加工した後に、職人さんが手で磨いて仕上げをしたりしています。

NTIC:なるほど。

磯部:例えば、凍ったお肉があって、切れない庖丁を持っていたら、どうやって切りますか?

NTIC:少しずつですか?

磯部:まぁ、擦るとか、溶かすとか、ちょっとずつやるとかしますよね?それらって、ずっと押しつけていたら切れないので、刃物を振動させるということですよね?

NTIC:それが、先生の研究テーマなんですね?

磯部:はい。うちでは、それを超音波でやろうとしています。超音波で加工することによって、普通ですと、磨けないようなこういうピカピカな面(図1)や、とても硬い材料とかが、削れるようになるのです。

 

鏡面加工について

NTIC:ピカピカだと磨けないのですか?

磯部:これは、鏡面といって、ピカピカですよね?それを、この工具(図2)で加工します。この先端(図3)に、ダイヤモンドがついています。他の方法ですと、こういうピカピカな面は出来なくて、もっと曇った面になります。超音波をかけてあげると、鏡面になります。

NTIC:はい、職人さんの手を借りず、仕上げ磨きしなくともですか?

磯部:そそ。そうですね。これは、何故かというと、こすりつけて加工すると、温度が上がってしまうのです。ですので、温度が上がってしまって、ダイヤモンドがなくなってしまうのですよ。

NTIC:はい、そうなのですね?

磯部:ダイヤモンドというのは硬いのですけれど、温度が上がると、鋼の中の鉄の成分とついてしまって、炭素がどんどん、逃げてしまう。でも、超音波加工ですと、ダイヤモンドと鉄をこすりつけても、ダイヤモンドはなくならないし、加工が出来る。何故かというと、やっぱり、温度が上がらないせいだろうなと言われています。だから、超音波をかけてあげると、こういう広い面も加工出来るようになる。

NTIC:加工というと、どんな風にするのですか?

磯部:穴をあける方法ですね。ドリル加工です。今、やっているのは「研削」なのか、「切削」なのか。どっちに近いのか、磨き加工といわれている加工です。

NTIC:加工時間的にはどうなのでしょう?これは、基本的には仕上げのところを言っているわけですよね?

磯部:そうですね。加工時間としてはこんな風に考えています。仕上げを受け持つ職人さんは、凹凸があるところを磨くのが得意だと思うのですが、この面を磨くとなると難しいではないですか?ですので、平らな部分は、超音波加工、そんな風にしたらいいと思います。昔、燃料電池が流行りはじめたころには、それの金型をこれで出来ないかという話がありました。超硬を相手に細かい流路を同じ精度で作りなさいと言われたときに、もう職人さんでは出来ない。そうなったときに、この超音波を使えば、人間がさわらないでも、全体を同じ精度で細かい流路を持つ金型が出来ます、というところで、狙っていたのです。

NTIC:平らな面だけを、加工しようとしたら、平面研削という形とイメージがだぶるのですが、あの平面研削よりも、どういうところに利点がありますか?

磯部:このサンプルは少し失敗しました。まっ平らな面に作ってしまったのですね。こうではなく、例えば、ある部分がコンマ1ミリ凹んでいて、その底の面が鏡面にしないといけないという形ですと、平面研削では加工出来ない。ですけれど、超音波を使うことで、底の部分も鏡面にすることが可能です。

NTIC:はい、それは、大きな利点ですよね。

超音波加工について

NTIC:それでは、先生が一番したい研究はどんなことでしょうか?

磯部:難削材に対して、超音波を使ってみたらどうかということです。硬すぎて加工できない場合や、レーザーとか、ウォータージェットとか、放電でしていることを、代わりに超音波の切削加工でと考えています。また、他の手段で出来ないところがあった場合、その部分を、超音波を使うことで、先に進めるのかなというところで、やっているところなのです。 超音波加工についてです。(図4)

NTIC:他の手法ですと出来ない部分を、超音波加工でと考えているということでよろしいですか?

磯部:そうです。超硬材で金型を作りたい、その手法で何かないかなと考えたときに、超音波という技術がありますということです。ですが、どういう原理で、超音波をかけたら、何故加工能率があがるのかが、わからないのです。

NTIC:技術的に結果が出ていないわけではなくて、結果は出ているけれど、その現象をつきとめている途中だから、ということですね?

磯部:はい。

NTIC:では、PRしてもいいわけですよね?

磯部:そうですね。これまでの機械加工というのは、工具やワークは振動させない世界でした。でも、超音波の世界って、そうではなくて、刃物を振動させてしまうのです。その結果として、加工抵抗を抑えたりとか、熱を抑えたりという結果が出てきます。

NTIC:今、加工抵抗が落ちる、熱が出ないと、おっしゃいましたね?それはなぜですか?

磯部:えと、押しつけた状態で、エネルギーを放り込めば、熱がどんどんたまっていくので、どんどん上がっていきます。ですが、超音波加工ですと、一瞬刃物が当たって、加工します。でも、その後、刃物がすぐ逃げるのです。

NTIC:逃げた状態で、振っているので、こっちからは放熱するという意味ですか?

磯部:そうです。その間は、切削液とか、空気中に触れているので、熱が下がります。熱って、加工した切りくずに逃げていくのです。ですが、きりくずがなかったら、刃先はそんなに熱くならない。
それと、そこから先の話を僕はやりたいのです。もっと、衝撃的に相手にぶつかっていくときに、どういう加工現象が起きるのか、ゆっくり変形させるのと、もっと速い速度でぶつかったときの挙動は違うと思います。そのへんを、今から追いかけてみたいと思っています。



非接触搬送について

 

磯部:実際、超音波を感じてもらいます。これが、超音波振動する素子です。これは、もう振動しているのですけれど。

NTIC:え?振動しているのですか?大丈夫ですか?≪素子に手をがざしている≫わぁ、風が送られているみたいです。ふわふわと感じます。もっと、強いのだと思ったのですが。

磯部:当然、強くも出来ます。

NTIC:そうですよね。

磯部:これは、水ですが、指入れてみて下さい。普通の水なんで≪水の中に素子を入れる≫

NTIC:はい≪素子が入った水の中に指を入れる≫

磯部:振動します。入れた指が、何か変わりませんか?

NTIC:はい、あっ、きたきた。何か感電しているみたいです。

磯部:この超音波のエネルギーが水の中に入っていれば、メガネは洗浄されるし、もっと、細くして集中させていくと、例えば、この先の工具をつけたりすれば、工具を通して、相手にエネルギーが伝わっていきます。
≪水が素子について、浮いている≫

NTIC:わぁ、浮いていますよ。

磯部:浮いていますよね。

NTIC:面白いです。

磯部:浮くのですよ、浮くのもそうなのですが、止まりますよね。(図5)

NTIC:止まる?静止?

磯部:そうです。

NTIC:浮いた後に、推力を働かせるのも、超音波でやろうという考えでいいのですね?

磯部:えと、推力を超音波でやろうか、それとも、止まった状態なので、この下を動かしてやればいいかなというので考えています。

NTIC:あーなるほど。

磯部:浮かべるのは、昔からあるのですよ。浮かべるというのを、超音波でやってしまうと、結局、抵触されてしまうのが多いので、うちは、浮かべるのは、空気で浮かべる。その場に留めようとする力を超音波でとか、動かすのを超音波でするという形(図6)で考えています。

NTIC:すごい。それは、先生以外で研究されているところはあるのですか?

磯部:うちのテクニックというのは、特許出願もしています。その限りではないと思っています。他のやり方で、超音波を使った方法は、あと1か所だけあります。


NTIC:コスト的にはどうですか?


磯部
:コスト的には安いです。超音波の装置だけ作るとしたら、1セット、2~3万円でつくれますから。ですので、運ぶための工程を少なくしていけばコストに反映されますし、それがカギだと思っています。

NTIC:それって、面白いと思いますよ。マテリアルハンドリングですね。中心になる加工の部分よりも、その他の部分をマテリアルハンドリングしてというケースの方が多いので、県内に売り込む素材としては、それは面白いです。

磯部:例えば、触ったらアウトなものを運ぶとか、そういう場面でも超音波でという手法は有効に思えますので、何かそういうことがあれば、話を伺いたいと思っています。

NTIC:搬送ということですと、他の手法では、エアースライドとかありますが、大きな違いはありますか?

磯部:エアースライドというのは、浮かべられるのですけれど、推力は働かない。逆に、ガイドのためにピンをたてないといけないのですよ。ガイドピンの変わりに、超音波で静止させることが出来ます。ガイドピンは使いたくない、そういうニーズがあればいいなと考えています。

NTIC:触らずに運びたいということについては、基本的に需要がありますから、そういうニーズもあるということですよね。運ぶものの重さは?超音波の出力でいくらでも調節できます?

磯部:うちでやろうとしているのは、自重自体は、持ちあげるのは、もうエアーでやってしまうので、口しだいです。ただ、今やっているのは、エアーの力なので、これを使った状態で止めて運ぼうとすると、やっぱり加速度をそんなにあげられないです。軽いものだったら、問題はないのですが、重いものだと、ゆっくり運ぶことになるので、そこのところは、少し考えてみるところはあると思います。

NTIC:そうですね。色々と広がる技術だと思います。今日は超音波の実験まで見せていただき、ありがとうございました。