原子力安全工学専攻 教授(兼)電気電子情報工学専攻 准教授
菊池 崇志


 

 

プラズマについて

NTIC:プラズマについて簡単に説明していただけますか?

菊池:最近、良いものができまして、何年か前から文科省が 周期表(ポスター)を一家に一枚配るというのをやってい るんですが、それが今年はプラズマなんです。(最終頁 参照)このポスターを配ってプラズマの布教活動をして いるんですよ(笑)。ポスターを見ていただけると分かる と思いますが、本当にいろんなものがプラズマなんです。
 固体・液体・気体 がありますよね。 その次がプラズマ なんです。固体から温度を上げていくと液体になっ てそれを沸騰させると気体になってさらに温度を上 げるとプラズマになるんです。炎も雷も太陽もプラ ズマなんです。自然界にはというか身の回りにはプ ラズマがたくさんあるということなんですね。

NTIC:そのプラズマの中で先生が研究されているのが核融合なんですか?

菊池:プラズマで核融合反応をしている のが太陽なんです。太陽以外にも夜 空に光っている星もそうなんですけ れども、いっぱいエネルギーを出し てくれるんですね。そのエネルギー で発電をすれば、今の火力発電とか 石油を燃やすことが要らなくなりま すよね。

NTIC:CO2削減ですね。

菊池:そうですね。今一番メジャーなのはITER(イーター)という国際熱核融合研究プロジ ェクトなんですが、開発にお金がかかってしまうので、日本だけだとかアメリカだけだと かではできないので世界中で協力してやっています。

NTIC:では、その研究をされているんですね。

菊池:いえ、私はそのタイプではないのです。私は、ITERとは違うタイプの核融合の研究 をしています。

 

核融合について

NTIC:今現在、原子力発電がやっているのは基本的には核分裂ですが、先生が研究されて いるのは核融合ということで、その差と、核融合になると核分裂に比べてどんないいこ とがあるか教えていただけますか?

菊池:世の中にはいろいろな材料がありますが、その材料は全部原子核、原子でできている んですよ。その原子核の中はさらに小さな粒子がくっついてできているんです。それが 水素だったり酸素だったり重いものであれば鉄だったりウランだったりと、いろんな種 類があるんですね。それらがくっついているんですけれども、くっついているということ は何かの力が働いているということなんですが、 それを外に取り出せればエネルギーとして利用が できる。くっついている結合のエネルギーを電気 エネルギーに変えるということを考えているんで すね。それをどうくっつけたり離したりするかが 難しいことなんですが、今実用化されている原発 はウランというすごく重い粒子がくっついてる原 子核を割って分裂させるんですね。その分裂をす るときに出たエネルギーを回収して電気を作ると いうやり方をしているんですが、わりと簡単なの で今使われているんです。それとは、逆に少ない 粒子でできているものをくっつけることでもエネ ルギーが出てくるんですね。分裂と全く逆でくっ つける。それをやってあげると同じようにエネル ギーが出るのでそのエネルギーを回収して電気を 作れますよという方法です。

NTIC:そちらを研究されているんですね。

菊池: はい。核分裂は残念ながら反応が起きた後に放射性廃棄物が出てしまうんですが、核 融合はできないんです。核融合のほうは人間からするとラッキーなことに人間には無害 なものになるんですね。自然界は別にわざと有害なものを出しているとか無害なものを 出しているわけではないんですが、たまたま人間には都合がいいものが核融合なんです。 ですから、核融合ができればエネルギーがいっぱい取り出せるし、放射性廃棄物という ものが出ないので非常にクリーンで良いですよね。ということなんです。
 燃料は海の中にいっぱいあります。海の中の水素(正確にはHの変わったもの(重水素、 三重水素))なんです。水はHOでできていますからHが沢山ありますので、そこから 取り出すことができるので1億年分くらいは燃料が尽きないだろうと考えられています。 1億年経てば人間のほうが先に滅びてしまっているかもしれませんが(笑)。
  これができれば電気に困らなくて済みます。ということなんです。

NTIC:できればとおっしゃっているということはまだできていないということですか?

菊池:そうですね。先日の新聞記事に2041年以降にこの技術ができると書いてありまし た。研究の歴史は長いです。技科大はこの核融合の研究を開学時からやっていて、卒業 後も企業に就職してそのまま研究を続けている方もいらっしゃいます。
 そもそも人類の歴史としては火を使うところから始まって太陽を目指して核融合をす る。人間の歴史とプラズマの歴史はずっと関連してきているんですよっていうことです ね。

プラズマの利用法について

 

NTIC:さあ、いよいよ具体的な核心に入らせていただきます。

菊池:私達のところは、プラズマを研究しているグループで、原田教授、佐々木助教、私の3 人でグループを作って研究室を運営しています。さっき言った核融合も一つの研究テー マとしてやっているのですが、その他にもプラズマは色々な利用方法があります。たぶ ん一番よく知られている例は蛍光灯です。プラズマは光るのでライトとしても使えます よということですね。最近ではプラズマディスプレイやプラズマテレビとかも出てきま したが、あれも基本的に同じです。あとは、非常にエネルギーが高いので溶接とかにも 使われています。他に最近は空気清浄機というように環境とか、健康関係にも使われて いますね。

NTIC:脱臭機っていうのもありますよね。

菊池:そうですね。他にも殺菌や滅菌ができたり、がん治療とかにも使われているんですよ。 ついこの間帰ってきた「はやぶさ」、あれもプラズマを使ったエンジンで無事7年かけ て帰ってきましたよね。あとは、材料を作るときにもプラズマを使うと非常に効率よく 作れるので、最近流行のナノ材料やナノテクとか太陽光パネルとかエコ発電が流行って いますので、そういうところでも使われています。
 私達のところはいろんなところに手を出していまして、さっきもお話をしましたが、 殺菌や滅菌もできるので、海洋微生物(プランクトン)にプラズマを当てて不活性化して しまおうという研究をしています。実はこれは環境問題として世界的に問題になってい るんですが、船が荷物を運ぶ時に行きは荷物を積んでいるのでちゃんと沈んで安定して いるんですが、帰りは軽くて浮いてしまうのでバランスが取れなくて転覆してしまうん ですね。転覆しないためにバラストタンクというタンクに海水を汲むという方法をとっ ているんですが、そのために外来微生物の問題 が発生しているんです。日本でも赤潮等が発生 して困っています。そのため、去年、国際海事 機関(IMO)が2016年までにタンカー等の大型 な船も小型の船もすべて処理装置を付けて水を 外に捨てる時はきちんと海洋微生物を処理して から出しなさい。という決まりを出したのです が、ただ、どうしたらいいの?というところが 難しいところで、これといった決め手がないん ですね。

NTIC:殺菌剤とかを使ったらまた環境汚染になりますもんね。

菊池:そうなんですよ。そこでプラズマなら狙ったところだけを処理できるはずなので効率 よくできないかという研究をしています。

NTIC:研究中ということは、まだ船には使われてはいないのですか?

菊池:そうですね。とりあえずはできるのかなって言うことで、小さい容器を作ってプラン クトンには可哀そうですが犠牲になっていただいています。学生が育てていると愛着が わくらしくて、処理しづらいんですよねって言っています(笑)。

 後は、もう少し産業応用っぽい話なんですが、県内の企業さんと携帯電話等に使う髪 の毛よりも細くした金属の線を焼鈍するという研究をしています。細い線を作るには入 り口は広く出口は狭いダイスという穴に繰り返 し通して徐々に細くしていくのですが、線の中 の組織が壊れてしまいパキっとすぐに折れてし まって使い物にならなくなってしまうので、焼 き鈍しということをするんです。実験してみる とさわり心地が違うので分かるんですが、熱を 加えてやると中の組成が元通りになってやわら かくなるんです。それをプラズマを使ってやる と効率的にできるのではないかということで 新しい製品開発に向けて研究しています。

NTIC:焼き鈍しについてですが、今現在は単純に炉の中を通して、ということをしている んですね。

菊池:はい。炉の中を通して作るとなると、細ければ細いほど扱いが難しいんですよ。後は ダイスを通して作るとどうしても潤滑剤が必要になり、その潤滑剤をとってから製品に しなければなんですが、今は焼き鈍した後に大きい設備を使って洗剤みたいなところに 通して洗浄しているんですが、今日はあまり紹介しませんでしたが、プラズマは微生物 を処理できるのと同じように表面についているゴミを取ることもできるんですよ。です ので、プラズマを使ってやれば焼き鈍しと同時に洗浄もできるということで効率が良い と考えているんです。

 

未来におけるプラズマの考察

NTIC:その細線の焼き鈍しをプラズマで現実にやっているというところまではいっていな いんですか?

菊池:つまり、実機を作っているということですか?そこまではまだですね。実験室レベル ではもうできているんですが、それを商業化するとなるとまだかなり敷居があります。
 後は、また少し変わって原田先生のご専門なんですが、「MHD」という日本語で言う と「電磁流体力学」といって、これもプラズマの一種なんですが、プラズマは磁石や電気 を近づけると動いてくれるという特性があります。その特性を利用してまずは発電をで きないかという研究をしています。この方法ですと非常に温度の高いところで発電がで るので今の蒸気タービンやガスタービンを回すよりも効率よくなるのでCO削減になる のではないかと考えています。これは本学のメタン高度利用技術開発センターのテーマ として今やっているんですが、メタンを使って燃やしたガスを通してやってすごく沢山 の電気エネルギーを取り出そう、もう一つは電気を取り出せるのなら逆に電気も入れてあげると加速もできる。ということで、今話題の「はやぶさ」に 使われていたイオンエンジンのようなプラズマを使った宇宙推 進の研究もしています。あれもプラズマなんです。
 後は、非常に高密度のプラズマが最近作れるようになったん です。そうなるととても不思議なことが起きるんですね。とい いますか、良く分からないんですよ。そういう物性を調べたい ということでやっています。これは核融合とも関係があるんで すが、土星や木星の内側はどうなっているか知っていますか?

NTIC:知らないです。

菊池:私も知らないんですけど(笑)誰も行ったことがないので分からないんですが、土星や木星は太陽に比べれば小さいです。が・・・、地球に比べるとすごく大きい星ですよね。あの星の内側はぎゅうぎゅう詰めの高密度のプラズマ状態になっているんじゃないのかと言われているんです。惑星形成論を調べている宇宙物理の先生方に言わせると「水金地火木土天冥界」の並びは宇宙物理の観点からすると、木星と土星の位置が逆になっていないと説明がつかないらしいんですよ。ただ、内側が高密度のプラズマみたいな状態になっているらしくて、そもそも良く分からないらしいんですが、たまたま太陽系だけ逆にな っちゃったのか、それとも私達の考えが甘くてこの太陽系がオーソドックスなのか判断ができないんですね。たまたま何かのきっかけで入れ替わって、太陽系だけ人間が生まれたのかもしれない。逆にこれが普通の形で太陽系みたいな形だと、もしかしたら宇宙人が沢山いるのかもしれない。という大きい宇宙を調べるためには細かいことから調べてデータを積み重ねていかないと分からない・・・。ということらしいんです。こういうことをするためにパルスパワーという技術が使えます。エネルギーはたいしたことはないんですがぎゅうぎゅうに圧縮してやって一瞬だけすごい電力を出してやれば瞬間的に太陽みたいなプラズマが作れるよということですね。太陽みたいなものを長時間ずっとプラズマとして作っておくにはすごいエネルギーが必要になってしまうんですが、瞬間であれば非常に大きなパワーを出せるのでそういう形の技術を開発してプラズマを作りやすくするという研究もしています。また、これを利用した技術に粒子ビームというのがあるんですが・・・。

NTIC:ビームというとウルトラマンのビームを思い出すんですが。

菊池:うちの母も同じことを言っていました(笑)。ま、そんなんでいいです。といいますか、基本的にそうなんです。さっきも言いましたが原子核みたいなものを飛ばすんですね。すごい速さでいっぱい飛ばしてやると物に当てたときに何かが起きるんで。

NTIC:何が起きるんですか?

菊池:いろんな事が起きるんです。私のやり方は核融合の起こし方をこのビームを使ってやるということをやっています。

NTIC:電気系の末松先生の研究はそれを使って粉々にさせていかに細かい粉にできるかということをされていますよね。

菊池:はい。パルスパワーを使ってそういうことができて、後は極限センターでやっていることは、ビームを使って精度良く物を測るということもしています。小さいものを飛ばしているので小さいものを測る時に便利なんです。何でできているのかわからない時に極限センターに行ってビームを当ててもらうと、ビームを当てることによって何かが出てくるので、それを見て信号を測れば材料の中にどれがどれだけ入っているか全部分かるんですよ。末松先生は材料の研究をされているので自分が作ったものがちゃんとうまくできているか調べるためにも使われています。

NTIC:通常言われている成分分析計というのは基本的にこれが原理なんですか?

菊池:他にも色々ありますが、その原理のうちの一つです。この方法ではがっちりと量まで測定するには工夫が必要ですが、今測った部分の何パーセントとかを調べるのは簡単にできます。
 以上のことが、大体プラズマを使った私達のグループでやっている内容です。こういう風にいろんなことができるのでプラズマは面白いですよ。

NTIC:最後に、お聞きしている範囲だと基本的にテーマというのは対企業の中では課題自体が今のこの範囲だとすごく大きいですよね。となると、今までお付き合いしてきた起業は大企業が多かったですか?

菊池:そうですね。細線を共同研究しているサイカワさん。後は、確かに大きいところかもしれませんね。富士通コンポーネントさん、日産自動車さん。水質関係でプラズマではなかったので今日は話さなかったですが、加賀田組さんとか・・・。

NTIC:大きいですね。それくらいの方たちが目をつけるようなテーマではないかと思いましたので。中小企業等でプラズマを応用してのターゲットになれば殺菌とか、脱臭とかそういう泥臭いところに持っていったほうが中小企業さんが乗ってくれるかなと思いました。すごく広い分野なのでプラズマっていうのをイメージした時にこれってこういうものに応用できるんだよね。というキーワードとして殺菌とか脱臭とかを頭にイメージを置いておけば結び付けやすいのかなと思いました。
   ありがとうございました。